結婚したくてなにが悪い?!
私は穣さんへの報告とお礼を済ませた後、古い知人のマンションを訪ねた。訪ねたと言っても、知人に会うのはついでで、会いたかったのは、別の人だ。
そこには、ドアマンのボブが居て、『コンニチワ キョウコ』と、以前と変わらない微笑みで、ドアを開けてくれた。
少し年老いた様だが、優秀なドアマンは未だ健在だった。
私は知人に口添えをお願いし、1ヶ月ボブの下で勉強させて貰ったのだ。
「他にも、どうしてもお会いしたい方がいましたので…その方のところで、いままでお世話になっていました。」
「その人とは…いや、良い。」
え?
「あの…途中で止められると、凄く気にならんですが?」
「どんな関係か気になるんだよな? はっきり聞けば良いのに?ホント情けない男だよ? 赤ん坊からばぁさんまで、一瞬にして心奪う男が、本命になると何も言えなくなるなんて?あー情けない。」
声のした方を振り返れば、生田さんが事務所のドアにもたれる様に立っていて、可笑しそうに話した。
「俺の知ってる色男の斗真は何処に行ったのかねぇ?」
「え?」
もしかして、私の事気にしてくれてる?
「うるせぇー、お前は仕事に戻ってろ!」
耳まで真っ赤にして、こちらを見ようとしない彼に可笑しくなる。
おじさん相手に、中学生か⁉︎ と、突っ込みたくなる。
「お世話になった方ですか? ちょっと歳は離れてますが、とてもダンディーで素敵な彼ですよ?今度、私に会いに日本まで来てくれるそうですから、その時ご紹介しますね?」
「・・・・」
「と、行っても奥様とご一緒で、観光のついでに私の仕事ぶりを、見に来てくれるだけですけど?」
するとホッとした様に息を吐くと、同時に差し出された数枚の紙。