結婚したくてなにが悪い?!
「これは?」
「俺のこの先半年のスケジュールだ!」
え?
ここへ来る前に本社へより、以前、私が犯した事へのお詫びとお礼をする為に、総帥に会いに行って来た。
それなりの処分を覚悟していたが、私の処分は大田さん…桜花崎さんに、一任してると言われ、総帥からは特に何もお咎めはなかった。
「あの…私の籍はまだあるという事でしょうか?総帥からは、大…桜花崎さんに聞く様に言われましたが?」
「あゝ、あんたの籍は以前と同じここ(ホテル)に置いたままだ」
「・・・有難うございます。」
「1つ聞くが、何故ラウリンのプロポーズを断った?」
「スイスには桜が無いからですかね?」
スイスにもソメイヨシノや太白桜は有る。
日本・スイス150周年を記念して、スイス・ジュネーブの公園に薄いピンクのソメイヨシと太白桜が植樹されたらしい。そのプロジェクトに、ラウリンの親族も尽力したと聞いた。
日本へ逃げ帰りたくなっていた頃、ルームメイトのリサが、桜を見に連れて行ってくれたことがあった。桜は既に満開で、イタズラな風と舞う桜はとても綺麗で、日本を思い出させた。
その時、舞い落ちた桜の花びらを掌に、いつか会える時まで頑張ろうと誓った。
「あんた、もう36だろ? まだ、結婚願望あるのか?」
はぁ?
結婚したくて何が悪い?!っと言いたいところだけど、流石に以前ほど強く無い。
「まぁ以前ほどじゃ無いですけど?多少はありますよ」
「じゃ、俺が貰ってやるしかないな? そこでだ、あんたの初仕事は、俺達の結婚式のプランニング」
「はぁ?」
「それから結婚しても、あんた一生この仕事辞めれないからな?覚悟しろよ! 折角、スイスまで行かせたんだ、会社の為に働いてもらう」
「ちょっちょっと! それって、プロポーズって事? プロポーズなら、普通は指輪とか用意してするもんじゃ無いの!?」
「あんたにはこれが似合う!」そう言って投げられたのは、GMマークの入った名札だった。
GM…
えっ?私が…?
「これから、俺は本社へ戻るけど、あんたはちゃんと働けよ?」と言って彼は事務所を出て行ってしまった。
えっー!?
ナニコレ!!
こんなのあり!?
だって普通は、プロポーズする程の相手がやっと帰ってきたのに、抱擁まなければ、キスもなく、指輪の代わりに名札を投げて、仕事しろ?
あり得なさ過ぎ!
でも待っていてくれたのは、素直に嬉しい。