結婚したくてなにが悪い?!

手元の袋から2本目のビールを出し、プルトップを開け喉に流し込む。
だが、流石に2月の屋上は冷える。
いや、屋上じゃなくても、2月の外は冷える。

ブルっと体をふるって、コートの襟をたて、そして再び、3本目のビールへと手を伸ばす。

先程声をかけて来た男は、私の隣へ立ち煙草に火をつけ、紫煙をくぐらせながら聞く。

「どれだけ飲むの?」

はぁ?
あんたに関係ないじゃん!と、思いながらも素直に答えてします。

「酔えるまで!」

男は私の返事を聞いてあからさまに溜息を付いた。

何だその溜息は!?
あんたに迷惑かけないちゅーの!

5本のビールを飲んだ所で、立ち上がろうとすると、男は私の腕を掴み支えた。

「なに?」
「酔ったんでしょ?」と、言った男は嫌味な笑みを浮かべた。
「ち・が・い・ま・す!トイレです!!」

寒い夜空の下、冷たいビールを飲んでればトイレも行きたくなる。

「はいこれ!」
私は最後の缶ビールを、男に差し出した。

「ん? なに?」
「私が酔ってここから落ちない様に、見ててくれたんでしょ?
大きなお世話だけど、一応お礼。
社会人のマナーとして?」

でも、社会人のマナーって私が言えるのか!?
思わず自分の言葉に自分で突っ込みを入れたくなる。
社会人のマナーと言うなら、仕事終わりにこんな所で飲んでる私の方がマナー的にどうかと言うものだ。

缶ビールを彼に押し付けると「お先に失礼!」と空き缶の入った袋を持って屋上を後にした。



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