結婚したくてなにが悪い?!
「あれ、さっきの男だろ?」
車はいつの間にか、私の住むアパートの前まで来ていた。彼が言った、あれとは、アパートの階段に座る裕人の事だった。
「・・・・」
「しつこい奴だな!? 明日仕事休みなら、うちに来てもいいぞ?」
「大丈夫です。 彼もそんなに馬鹿じゃないんで、これ以上何もしないと思いますから…お世話になりました。」
お礼を言って車を降り、アパートへと歩いて行くと、俯いて座っていた裕人は、私の足音に顔を上げ駆け寄って来た。
「恭子…ごめん… 大丈夫か?」
自分が殴った私の頬を触ろうと、手を伸ばしてきた。
「触らないで!
今回は穏便にすませるけど、今度私の前に現れたら警察に届けるから!
分かったら帰って!」
もう二度と顔も見たくない!
女に暴力を振るう男なんて最低だ!
側に居られるだけで反吐が出る。こんな夜更けに言い争っていては近所迷惑になる。私はドアの鍵を開け、部屋に入ろうとすると、裕人まで入って来ようとする。
「ヤダ!帰って!大声出すよ!?」
「巫山戯るな!俺をフルなんて許さない!!」
必死に裕人を押し出そうとするが、男と女の力の差には敵わない。ましてや左手は怪我していて力が入らない。
醜く歪んだ裕人の顔。さっき、私を殴った時と同じ顔をしている。
どうしよう…
このままだと何されるか分らない。
怖い…
誰か助けて!