結婚したくてなにが悪い?!

彼の部屋までやって来たものの、昨日今日、知り合ったばかりの男の人の部屋で、ふたりっきりと言うのは、流石にまずい。

「やっぱり…」

玄関で靴も脱がず躊躇している私に、男は呆れた顔をした。

「襲ったりしねぇから心配するな! 俺は抱きたいと思う女は、家には連れ込まない主義でな? いくら許容範囲の広い俺でも、流石にあんたは無理!」

はぁ!?

「あんた全然色気ねぇーじゃん!? 仕事上がりにあんなとこで酒飲んでマジ親父だろ!?」

言いたい放題言いやがって!
私だってあんたに何も感じないちゅーの!!

「それにあんたみたいな女抱くと、後が面倒くせぇーじゃん?俺結婚する気ないし、いい歳して結婚願望強いとか、マジひくわ!」

ひく??

「結婚したくて何が悪い!?」
「別に悪いって言ってないだろ?ただ…」
「私は誰でもいいから結婚したい訳じゃない! 私は、私の家族が欲しいの!互いを愛して、信頼出来る…互いを大切に想いあう本当の家族が欲しいの! だから、いくら私が結婚願望強くても、女誑しのあんたには全く靡かないし、あんたと家族になるのなんて頼まれても絶対ヤダ!抱かせくれって頼まれてもお断りよ!!」
「はぁ⁉︎ 誰が頼むかよ?人が親切にしてりゃ言いたい事言いやがって!だったら出てけ!」
「言われなくても出て行きますよ!誰がこんなとこ!」

私は部屋を飛び出しエレベーターのボタンを押す。

あームカつく!
助けてくれたから
ちょっと良い人かもって思ったけど?
全然良い人なんかじゃない!
あんな男がモテるなんて
皆んなの目どうかしてる!

なかなか来ないエレベーターにイライラして、私はボタンを連打した。
やっと来たエレベーターに乗り込もうとすると、腕を捕まれ、エレベーターに乗る事を阻止された。振り向けば彼だった。

「なっ何よ!まだ何か言い足りないの?」
「俺が出てくから、あんたは俺の部屋に居ろ!」
え?
彼は私に鍵を握らせ、エレベーターに乗り込んだ。エレベーターの扉が閉まる間際に見た彼は、バツが悪そうに顔を背けていた。




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