結婚したくてなにが悪い?!
「どうしよう…」
家主を追い出して、私が居るなんておかしい…よね?
やっぱり出て行こう。
荷物の入ったバックを持ち、玄関へ向かおうとした時、固定電話が鳴った。
珍しい…
独り身で、固定電話なんて置いてるんだ?
靴を履いてドアノブに手を掛けるが、一向に鳴り止まない電話。
もしかしたら緊急…かも?
家主は留守だとだけ伝えればいい。
ふぅ…
私は深呼吸して受話器を取った。
「もしもし、ここの人いま留守です… 」
『勝手にひとんちの電話出るな?』
電話の相手は、ここの家主だった。
「はぁ!? だったら掛けてくんな!」
今、この部屋には私しか居ないのに、あんたは誰に掛けてきたのよ!?
『勝手に出て行くなよ? 俺は部屋の鍵持ってねぇんだからな!?』
どうして…
もしかして、私が出て行こうとしてるって分かった?
「今どこに居るの…よ?」
『仕事』
やっぱり、仕事抜け出して来たんだよね?
「あの… 鍵…今から持っていきます。」
『アホか! その顔でホテルに来てみろ?あらぬ噂当てられて、数時間後には有名人だぞ?』
「…でも…やっぱり家主を追い出しては…」
『俺はいくらでも泊めてくれる女は居る。遠慮しないでそこに居ろ!それから、あんた1週間仕事休み!』
「えっ?」
『その顔でお客の前に出れないだろ?1日やそこらでその腫れはひかねぇぞ? 話はついてるから心配するな?』
私の返事を聞かず、言うだけ言って電話は切れた。
しかし、受話器を置き溜息をついた時、再び電話が鳴った。
「もしもし…?」
『だから勝手に電話に出るな?』
「あ゛⁉︎」
なにコイツ!?
腹立つわ!
だったら掛けてくるな!?
「クックク…」
受話器の向こうで彼は笑いを堪えている様だ。
「何か用ですか!?」
「冷蔵庫の中のモン勝手に、飲み食いしていいからな?」
「え? ありがとう… 」
「ゆっくり休め、じゃーな!」