結婚したくてなにが悪い?!
日本に帰って来て1週間。
実家にも寄らず、女友達の所を泊まり歩いていた。
顔を出せと、毎日の様に掛かってくる電話に、仕方なく実家へ顔を出した俺に、親父は経営に携われと言う。
「断る! 穣がいるなら良いだろ?」
「柊真! お前は長男だという事忘れてないか? この家を継ぐのも会社を継ぐのも、長男である、おまえの役目だ! お前もいい歳だ。 そろそろ腰を落ち着けて、俺の後を継ぐ準備をしろ!」
この人の有無を言わせない姿は、今は亡き厳格だった祖父を思わせる。
俺は長男ではあるが、この人の実子では無い。
この人の亡くなった兄の子で、この人と俺は謂わば、叔父と甥の仲なのだ。
昔はこの人も優しく良く笑い、よく俺を遊びに連れて行ってくれた。
だが、跡取りだった俺の本当の父親が事故で亡くなり、次男だったこの人がお袋と再婚し、その時からこの人の人生も変わった。
古くからの家柄を守る為、母と俺を守る為にと爺さんの命(めい)だそうだ。
まぁ家督争いを避ける為ってとこらしい。
俺を跡継ぎと言っていた祖父も、もういないのだから、自分の実子の穣に継がせればいい。
お袋も何も言わないだろう。
とにかく俺は跡継ぎとやらには興味無い。
好きに生きさせて欲しい。