結婚したくてなにが悪い?!

「3年?… ううん4年前になるかしら? 私達の年代が作った非公開の情報交換の場があってね。まぁホテルマンの飲み会ってとこかな? そこに彼女を連れて行ったの… 同じ仕事をもつ者同士が、意見交換したり、同じ仕事でもホテルによって考え方が違えば、サービスの仕方も違うから、勉強になると思って…あの頃の彼女、少し悩んでいたから…」
「そうでしたね? ホテルマンになって5年、ちょうど女性は悩む頃ですからね?うちの長谷川も悩んでいましたけど、あそこ迄では…まぁ性格もあるでしょうげど?」

小野さんと生田の話で大体の事は分った。27と言えば、女性は結婚を考える歳だろう。 勿論、女性全てがと言う訳ではないが、一般的に就職して5年もすれば責任ある仕事も任せられ、後輩の指導にも当たらなくてはいけない。

そんな中、親から『そろそろ結婚』と言う話が出て来るだろう。だが、不規則な仕事をしていれば出会いは少ない。
相手が居ても、仕事に理解のある人じゃないと、上手く行かないだろう。

そのうち、親戚の叔母さんや、お節介な近所のオバサンまで見合い話を持って出てくる。
結婚がしたいだけなら、そんなに悩む事無い。多少妥協しなくてはいけないだろうが、仕事も辞めて見合いでも、なんでもして相手を見つけて結婚すればいい。

だが、彼女は違うだろう。
彼女の仕事に対する姿勢は、結婚までの腰掛けという甘いものではない。
だから、同じホテルマンだったのかもしれない。

「しかし、私の可愛い深田を傷つけるなんて許せない!今度会ったら、一発殴ってやろうかしら?」
「小野さんが言うと、冗談に聞こえないからやめて下さい。」
「いや、本気だから!」と小野さんは右手で拳を作る。




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