結婚したくてなにが悪い?!

「そう言えば、ベルの葉山さん寿退社らしいよ?」

誰から聞いてくるのか、由美の情報は早い。

葉山さんって…
ああ、ショートカットの子か?
彼女は確か入社してまだ2年の筈。
て、事は24歳だ。

結婚か…
24で寿退社? 早いなぁ… 
折角ホテルマンになったのに辞めるんだ…?

「私達も早く結婚して退職しないと、厄介な仕事ばかり回されるよ?」
「新人研修はともかく、ホテルの仕事は好きだからさ、それは良いんだけど…」
「まぁ、結婚したくても、相手がいなきゃ結婚は出来ないよね? 最近の合コンはろくな奴居ないからなぁ」と嘆く由美。
「昨日の弁護士との合コン、ダメだったの?」

由美は弁護士を必ずゲットすると意気込んでいた。 しかし由美はハズレだと、首を振る。

「如何にも自分は弁護士です!って、どや顔で難しい話ばっかする人とか、勉強し過ぎて頭にきちゃってる(ハゲた)人とかさ、この年になるとろくなの回って来ないわ!」

イラついたように豚汁の具を突っく由美に、食べ物に当たるなと手を押さえてやる。

「そっか… 合コンダメ! 社内恋愛ダメ! 後は見合い ? 見合っていってもね… 叔母さんが持ってくるお見合いもろくな人居ないしなぁ…」

うちの会社は社内恋愛禁止になっている。
特に現場に出てる私達ホテルマンは、NGなのだ。仲が上手く行ってるうちは良い。

理由はなんにしろ、別れでもして、同じ職場で働いていたら、気まずさが顔(おもて)に出かねないからだ。そんな姿をお客様へお見せすることは、絶対合ってはならない。それを知ってか、叔母はよくお見合いを勧めてくる。

こないだなんて、バツイチ子持ちを持ってこられた。断ったら、『30歳過ぎたら妥協する事も覚えなさい。』とまで言われてしまった。
すると由美までもが、妥協しないと無理かなーと溜息をついて言う。

「妥協ね… これ以上妥協するくらいなら、私は仕事と結婚するわ!」
「よっ深田キャプテンカッコいい!」

何がカッコいいんだか…
キャプテンなんて、まだまだなれませんよ!

「そう言えば、恭子、あんた今日、誕生日でしよ? おめでとう! 私、今日は夜勤だから、お祝いはまた今度ね?」

別にメデタく無いけど…
「有難う… 夜勤頑張って!」




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