結婚したくてなにが悪い?!
病院の帰り、アパートへ寄って貰うことにした。あの日から一度も自分の家に帰って居ない。由美から祐人の話を聞いて、アパートに帰れずに居たのだ。
だが、いつまでも大田さんの所に世話になっても居られない。そろそろ帰るためにも、一度アパートの様子を確認しておきたかった。
アパートの前に着くと、車の中からあたりを見渡す。祐人の姿がないことを確認して、私は車を降りた。
祐人だって仕事はある。
もしかしたら、私の事はもう諦めたのかもしれない。祐人だって、いつまでも私を追っかけれるほど暇じゃないだろう。
だから、そこまで怯えなくても良いのかも知れない。
ん?…なにもないの?
いつもなら、1週間も留守にしていれば、ダイレクトメールやらチラシなどがポストに貯まってる筈なのに、ポストには何一つ無い。
首を傾げて、ドアの鍵を開けようと鍵穴に鍵を差し込む。
「え…?」
鍵が開いてる…
確かに鍵は閉めて出た。
なのに鍵が開いてるという事は、誰かが開けたという事だ。
誰…
うそっ泥棒?
もしかして、今も誰かが部屋に居るかも知れない。そう思うとドアノブに掛けていた手が震えだす。
大田さんは私の手をノブから離すと、小さな声で「退いてろ」と言って、私をドアの影になる場所に移動させた。
大田さんは、ゆっくりドアノブを回し、ドアを開け「声掛けるまでそこに居ろ」と言って部屋の中へひとり入っていった。
私はドアの影に隠れ、何かあった時通報出来る様に、震えながらも携帯を握りしめ、大田さんを待っていた。暫くすると部屋の中から「入っても大丈夫だ」と声が掛かる。
私は恐る恐る部屋を覗き、大田さんの無事な姿を見て、ほっと胸を撫で下ろし部屋に入った。
部屋の中は荒らされた形跡も無く、押し入れの中に置いてあった、小箱の中の貴重品も無事だった。ただ、テーブルの上に郵便物が置かれていた。
どうして…?