結婚したくてなにが悪い?!

平田マリを呼び、話を聞いた。
思った通り平田マリは2327号室を掃除していた。

「だってぇドアノブサインが掛かってたから… 掃除しますよぉー。」

平田マリが言うには、長谷部様のお部屋のドアノブに、【掃除してください】のサインプレートが掛かっていた。だから、掃除したと言う。

一泊のお客様の場合は、お客様がチョックアウトされた後に、私達は部屋の掃除をする。 そして連泊されるお客様のお部屋は、要望がない限り、こちらのスケジュールでお掃除させて貰う。

だが、長谷部様の場合、執筆に必要な資料が床に置かれていたりする事もある為、基本水周りの掃除と、ベットメーキングだけでゴミ捨てもしない。要望のあった時だけは、通常のお掃除をさせて貰う。勿論、ゴミを捨てる際も気を使う。

だから、掃除をしてほしいと、ドアノブサインが掛かっていれば掃除する。だが、長谷部様は、起こさないで欲しくてプレートを出したと言う。多分長谷部様は間違えてプレートを出したのだろう。

「マリちゃん、長谷部様のゴミを捨てる際には、呉々も気を付けてって教えたよね? 確認しなかったの?」
「確認しようと思ったんですけど… 長谷部様、お休みになって居られたので… 」
はぁ…
じゃ、その場は捨てずに、後で確認してから捨てようよう…?彼女の言葉に溜息しか出ない。

「……で、書類封筒は? 覚えてる?」
「ん〜デスクの下のゴミ箱と一緒にあったようなぁ…」

あった様な? か…
この子、もう少し気遣いが出来ると、言うこと無いんだけだなぁ…

「地下行くよ!」

私は長谷部様の原稿を探すべく、地下のごみ集積所へ行くと言う。

「えー探すんですか?!」
「当然!」

大量のゴミの中から無理だと言う平田マリに、私は、「これはあんたのミスでしょ!」と言う。そして、平田マリを教育した私のミスでもある。
ミスと言われて納得のいかない様子の平田マリに、溜息が出る。

「あんたホテルマンとして失格!探しもしないで無理だと言うな!! 今、お客様が困ってるの!」

私達のミスで、お客様を困らせて良いわけがない。そんな事は絶対、在ってはならないのだ。




< 7 / 199 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop