結婚したくてなにが悪い?!

バーにはいろんなお客様が来店される。ホテルの宿泊者だけではなく、仕事帰りにゆっくりひとりで飲みたいひとや、久しぶりに会う旧友と、若い頃は好まなかったバーボンを片手に、昔しを懐かしみ語り合う人。カップルでふたりだけの世界を楽しむ人。

それぞれ、その一時を楽しんでいる。だが、厄介なお客も少なく無い。

目の前に座る20代前半の女性客は、初めて来店されたお客様だ。可愛さをアピールする様な…男性受けしそうなメイクや服を纏っている女性。俺が最も苦手とするタイプの女性だ。

一杯目はカシスオレンジを頼まれていたが、グラスが空いてから随分時が経つ。誰かを待っているのだろうか?

「何かお作りしますか?」
「う~ん、じゃ私をイメージしたカクテル作って?」

イメージといわれても…正直困る。
初めて来たお客の好みなど分かりゃしないし…
まぁそこそこいい女ではあるが、俺の好みじゃない。イメージなど湧きゃしない。
服の色にでも合わせるか…?

「アルコールは強め? 弱め? どうなさいますか?」
「ん〜わたしお酒あまり強くなくて…」
「畏まりました。」

シェイカーにポートワイン、砂糖、卵をいれてシェイクし、ワイングラスに注ぐ。

「お待たせしました。ポートフィリップです。」
「ポートフィリップ?」
「はい。 口当たりが良く、アルコールがあまり得意でない方でも、楽しんでいただけると思います。」
「ぅわー甘くて美味しい。デザートみたい!」
「可愛らしいお客様に、お似合いかと思いまして?」

思ってもない言葉が出てくる。
自分でも呆れる。
まぁ、これでお客が喜んで、常連客にでもなってくれればいいさ!




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