結婚したくてなにが悪い?!
深田じゃん?
隣は深田の同期でフロントの確か…
長谷川って言ったか?
カウンター端の席に座るふたりに、早川が「いらっしゃいませ。」と声をかけたが、直ぐに「早川向こうを頼む。」と言って俺が代わった。
「いらっしゃいませ。」
「へぇーあなたが噂の?
恭子、素敵な男(ひと)じゃん?」
長谷川は深田に話を振り、そして彼女は
「私はフロント…」
長谷川は、ホテルの従業員である事を自ら明かそうとした。だが、俺は自分の口元へ一瞬指を立て微笑んだ。
「長谷川様。今日はお仕事お休みでしたか?」
彼女達がプライベートで来ている以上、ここで、ホテルの従業員である事を証すのは好ましくない。彼女は俺の意図が分かった様で「あっすいません…」と肩を竦めた。
「何になさいますか?」
「アルコールの弱いカクテルをお願いします。」と長谷川が言うと、深田は「私はウォッカマティーニ」と言う。
へぇーあれ気に入ったんだ?
こいつも結構酒の事は知ってるみたいだな?
「畏まりました。」
弱いカクテルか…
長谷川には、アメリカン・レモネードにするかなぁ…