結婚したくてなにが悪い?!
カクテルを作り始めると、カップルの会話が耳に入ってきた。
俺はお客様の会話は聞き逃さない様にしている。だからといって、得たものを悪用したり他言はしない。ここで得た情報を他言すれば、ホテルの信用問題に関わる。勿論バーテンダーとしてもだ。だから決して他言はしない。あくまで接客する上で、そのお客様の情報のひとつとして頭の隅に入れておくのだ。
『ホテルのバーなんて初めて… 先輩は良くここ来るんですか?』
『うん、よく来るかな? ひとりでゆっくり飲めるからね? 三輪さんはナニにする?』
よく来る…?
へぇー常連客?
俺は初めて見たな…この男?
『わたしカクテルとかよく知らなくて…お酒はあまり強くないんです。 彼にも外では飲まない様に言われてるんですけど? でも、少しだけなら良いですよね? 甘いカクテルが良いです。』
『じゃスクリュー・ドライバーなんてどう? 甘くて飲みやすいから、君にもお奨めだよ?』
『じゃーそれで?』
『あっ君?』
男は、早川に、ジントニックと、スクリュー・ドライバーを頼んだ。
へぇー、酒が弱いって言ってる女にスクリュー・ドライバーね?
今夜あの女を喰うってことか?
まぁ俺には関係ない…な?
「……早川」