結婚したくてなにが悪い?!
「まさか、彼女を酔わせてどうにかしようとでも思ったの?」
「いえ、すいません。 間違えました。あちらのお客様のカクテルを…本当に申し訳ありません。」
「そう? 間違えたなら仕方ないわね? 気をつけて?」
俺は深田と長谷川に頭を下げ、早川の担当した男女のお客様にも俺は頭を下げた。
「直ぐ作り直しますので、少々お待ちください。」と俺が言ったところで、女性客が不安そうに聞いてきた。
「あの…レディーキラーってなんですか? スクリュー・ドライバーって…アルコール強いんですか?」
「そうですね、強い方ですね。フルーティーで口当たりが良いので、お酒の苦手な女性でも飲めると思いますが、実はアルコール度数はそこそこ高いことから、別名Lady Killerとも呼ばれてるんですよ?」
俺の言葉に女性は驚き、隣の先輩とやらの顔を見た。
「だから気を付けて下さいね? 酔って彼氏さん以外の男に喰われ無いように?」と囁き、男の方を見ると、男は気まずそうに視線をそらした。
そして女性客は、先輩の悪巧みに気付いた様で、帰ると言って店を出ていった。男性客もそれを追うように店を出ていった。
はぁ…
柄にもない事やったなぁ俺。
この時の俺は、一人楽しそうにミスティを飲んでる女性客の事を忘れていた。
「大田さんなんなんですか?『俺が作る。』って言っときながら、お客を間違えるなんて? らしくないですね?」
俺は早川が受けた注文を、俺が作るからと早川に伝えていたのだ。
「悪い。勘違いしただけだ。」
早川に詫びると、深田達のカクテルを改めた作った。
「先程は失礼致しました。アメリカン・レモネードです。今度は間違いなく、アルコールの軽い物にしましたから?」
長谷川はカクテルの色を綺麗と言って眺めていた。
「悪かったな? 今夜は俺の奢りだから」とウォッカマティーニを深田の前に置いた。