結婚したくてなにが悪い?!
バーを出てエレベーターを待っていると、大田さんが追いかけて来た。だが、私は彼の呼び掛けに振り返らずにいた。
「鍵忘れてるぞ?」
忘れた訳じゃない。置いてきたのだ。
「鍵ないと部屋入れないだろ?」
「ええ。鍵が無いと部屋に入れません。だから私の部屋の鍵返して貰えますか?」
私は顔を背けたまま右手だけを出した。
「あれ怒ってんの?」
「別に怒ってませんけど!」
「ちょっと悪乗りすぎだけど、まぁあの子達も悪気があった訳じゃないからさ?」
はぁ゛??
悪気がない??
「ちゃんと注意しといたからさ? そんなに怒るなって? シワが増えるぞ?」
「シワが一つ二つ増えようが、今さら変わりませんよ! なんせオバサンですから!?」
「マジギレ?…まぁまぁ怒り沈めてさ?」
彼は送ると言って、ネクタイを外し到着したエレベーターに一緒に乗り込んで来た。私は1階のクロークで荷物を受け取り、地下駐車場へと向った。
「ここって一般従業員はとめれないのでは?」
「そうみたいだな?」
ここに車を止める事を許されてるって事?
屋上の鍵も持ってるし…
ここに来て間もないはずなのに、ここの事知り尽くしてる。
この人、ホント何者だろ…?