結婚したくてなにが悪い?!
私のアパートへ送ってくれるとばかり思っていたが、着いた場所は大田さんのマンション。
「自分の家に帰りたいんですけど? 早く鍵出してください。」
「新しいアパート見つかった?」
「……まだ…なかなか良いところが無くて…でもこれ以上ここに…兎に角、暫くは今のアパートにいます。だから鍵返してください。」
「それは無理。」
はぁ?
「あのアパート来週取り壊しになるから?」
取り壊し…アパートが…?
「随分前から決まってたらしいぞ? あんた知らなかったんだな? 他の住人は、もう殆んど出てるらしい。だから騒がしくしても、誰も出て来なかったんだろうなぁ?」
嘘でしょ…
確かにアパートは古いし、大家のおばぁちゃんも高齢で、建て直す気は無いって言ってた。だから家賃も安かったんだけど、でも…急に取り壊すって…
「大家さんホームに入るらしいぞ? 身寄りがないから、自分で出来るうちに身の回り片付けておきたい。って、言ってた。何十年も住んでた思い出のある場所だろうに…人様に迷惑かけたくないって、立派な人だよな?」
一年前にご主人のおじぃちゃんが亡くなってから、少し元気無かった気がする。連れ合いが亡くなれば気落ちはするだろうけど、その頃から考えていたのかな…
「で、大家さんが引っ越し代を出すって言ってたけど?」
「それは貰えない。大家さんには随分良くしてもらったし、ホームに入っても何かといるだろうし?」
「あんたがそう言うと思って断っといた。それからあんたの荷物は今日業者が運び出したから?」
「はぁ!? ナニ勝手なことしてくれてるのよ!?」