結婚したくてなにが悪い?!
「考え方なんて人それぞれなんだから、仕方ないだろ? あんま気にするな?」
慰めようと言ってくれてるんだろうけど、この人には私の気持ちは分かんないと思う。
「大田さんには分かんないですよ! 女の子にチヤホヤされたくて、バーテンなんて、どうせ趣味みたいなもんなんでしょ?」
こんな事言いたい訳じゃない。全くの八つ当たりだ。大田さんのお客様への気配りを見てれば、いい加減な気持ちで働いてるなんて思わない。でも分かっていても止まらない。
「いつでも泊めてくれる女が居る?ってそれ遊べる女が何人も居るって事ですよね? 男は皆んなヤレればいいんですか!?」
何本かの缶ビールを空け、飲みたらないからとウイスキーに手を出そうとしたら、大田さんに止められてしまった。
「……あんた飲みすぎ! ほら水飲めよ?」
「放っといてください! 私なんて…」
大田さんが差し出した水のペットボトルを、悔しさのあまり払い除けた。
「ハァ…あんた不幸話大会でもしたいの?」
え?
「誰だって、一つや二つ辛い思いしてるんじゃないの?
だからって、“ 私は可哀想な人なんです”
“私は不幸なんです。” なんて言わないだろ?
世の中幸せな事ばかりじゃない。幸せそうに見えても、それぞれ抱えてるものあんじゃない? そうやって苦しみながらも皆んな頑張ってんじゃないの?」
「・・・」
「まぁそのうち逢えるんじゃないの? 運命の人ってやらにさ? あんた結構いい女なんだし?」
いい女…?
大田さんへ顔を向ければ目が合い、互いに見つめあっていた。