結婚したくてなにが悪い?!

何が少しずつ返して貰うだ?
一瞬ときめいた私バカみたい!

あの人いつもそうやって女を口説いてるの!?
あぁヤダヤダ…女癖の悪い男は懲りごり!
関わらないようにしなきゃ!

その時、我に返った私は、怒りを露にしたまま部屋を出た自分に気づき情けなく思った。

私なにやってるの?
正式な辞令はまだだとしても、これではバトラー失格だ!
こんな顔お客様に見られたら…

(パンッパン!)

自ら己の両頬を叩き、眉間の皺を伸ばす。

しっかりしなきゃ!
これではエグゼクティブフロアのコンシェルジュなんて夢のまた夢、失格だ!

さぁ、着替えて自分の本来の仕事に戻ろう!
事務所へ戻ろうとした矢先、後方で(ドサァ!)という音に振り返ると、小さな女の子が倒れていた。躓いて転んでしまった様だ。

「エミちゃん大丈夫?」と、駆け寄り抱き起こす女性。
母親だろうか?
女の子の身嗜みを直し、怪我が無いか確認してる。

「お怪我はありませんでしたか?」

私の問いかけに「はい。大丈夫です。有難うございます。」と女性は答えた。女の子へと視線を落とすと、女の子は見知らぬ私に怯えている様で、視線を合わせず、抱えていたクマのヌイグルミを握りしめていた。

人見知り…かな?

私は膝を折り、女の子の目線へと下りた。

「どこか痛い所は無いですか?」

女の子に尋ねるが、何も応えない女の子の代わりに側にいた女性が「エミちゃん大丈夫よね?」と聞き返した。女の子は小さく頷きはしたが、口を一文字にし抱えていたクマのヌイグルミへと視線を落とした。

ん?
どこか痛いのだろうか…?
あっ?



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