強引部長の独占ジェラシー


ドラマでよく見るお決まりの言葉が降ってくる。

暗くてハッキリは見えないものの、部長の目の前にいる女性は、確かに完璧な彼とも釣り合うくらいすらっとしていて美人な人だった。


最低って、部長は何をしたんだろう。

女性は怒った表情でふんっと顔をそむけると、その場を去って行く。

とんだ修羅場を見ちゃったな……。


そう思いつつも、部長でもフラれる事あるんだと思うとちょっとした優越感が湧く。

自然に緩みだす口元を隠しながら私は考えた。


今、部長はどんな顔をしているのだろう?
ひどく傷ついている?それとも寂しそうな顔をしている?


ーー完璧な人の完璧じゃないところを見てみたい。


その一心でもう一度、部長のいた場所に視線を向けると。


「あれ……いない」


彼はもうその場所にはいなかった。


「何だ、残念……」


ため息をついて肩を落とす。仕方ないから帰るかと歩き出そうとしたその時、背後から低い声が響いた。


「盗み見とはお前、そういう趣味があるのか?」

「うわああ……!」


突然話しかけられて驚いて、またその話しかけた人を見て大きく目を見開く。


ヤバい、ものすごくヤバい……。


「ぶ、部長……」


情けない声を出しながら、何度か瞬きしてみるけれど、目の前にいるのはさっき派手なビンタを食らった部長に変わりない。

これはまずいことになった。


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