強引部長の独占ジェラシー
「ごめん……」
それしか言えなかった。
驚きと恥ずかしさと、戸惑いで思考回路が完全にストップしてしてしまった私はその言葉を残して走り出した。
自販機コーナーを出てすぐ曲がろうとした時。ドン、という音が響くと共に私は誰かにぶつかった。
「っ、」
ぐらりと傾いた身体は地面につかなかったものの、誰かにしっかりと支えられていて、ぎゅっとつぶっていた目を開くと同時に私は言葉が漏れた。
「っ、あ……部長……」
肩幅のしっかりした、力強いウエイトに支えられて包まれる。
「大丈夫か?」
その問いかけに答えることが出来なかった。
最悪だ。最悪すぎる。
このタイミングで部長に会うなんて。
もしかしたら、さっきの話が聞こえてたかもしれない。
「……すみません、ありがとうございます」
私はしっかりと足を地に着き、立ち上がると恐る恐る部長の顔を見た。ばっ、と気まずそうにそらされる視線がさっきの答えを示唆している。
「すまん、聞くつもりは無かったんだが……」
一番聞かれたくない相手だった。
もうダメだ。
何もかもがぐちゃぐちゃになった思考を整えることなんて到底出来ず、私はこの場にいられなくなってもう一度、逃げるようにこの場を立ち去ったーー。