強引部長の独占ジェラシー
昨日、部長から逃げてしまったことをどう説明すればいいのだろう。よくよく考えれば、他人の告白を聞いたと伝えただけで、相手に逃げられるなんて意味が分からない。
意識してるのは自分だけで、考え過ぎていっぱいいっぱいになっているのが恥ずかしかった。
自分のとった行動を思い出せば出すほど嫌になる。
「……以上で本日の会議を終了します」
気づけば会議は終わりを告げていた。ぞろぞろと人が立ち上がり会議室から出ていく。私もその波に遅れないように椅子から立ち上がり、資料を持ってそそくさと立ち去ろうとした。
その時。
「純夏ちゃん、」
後ろから掴まれた手によって足を止めた。その手は逃さないとばかりに力が強く、振り向かなくても誰だかは分かっていた。
「河原……くん」
「あのさ、今日お昼の時間に少し話したいんだけど、時間いいかな?」
私の様子を伺うように不安な表情を見せながらそんなこと言われれば、彼の誘いを断れるわけが無かった。
「うん……」
うつ向き加減で頷くと、河原くんは安堵の表情を見せる。
言わなくてはいけない。
昨日の返事を。
分かってる、分かってはいるけれど、どう伝えたらいいだろう。
「じゃあまた後で」
河原くんはそう言うと、先に会議室を出て行った。