強引部長の独占ジェラシー
「ねえ、ランチどこ行く?」
「いつものところでいいんじゃない?」
昼休みの時間はすぐにやって来た。
取引先とのメールチェック、データ修正の作業、完成したデータを送り終えた頃には昼の時間を指していた。
早く来ないで欲しいと思えば思うほど、時間はあっという間にやって来るものだ。
「純夏ちゃん、お疲れ様。お弁当持ってきてるんだっけ?」
オフィスの中心にあるエレベーターホールで待ち合わせした私たち。合流すると、河原くんは私の手元に目配せをして言う。
「うん。今日は作って来ちゃった」
「じゃあちょっと待ってて、お弁当買ってくるから屋上で食べよう。あそこ人がいないんだ」
「分かった」
気まずくて、さっきからほとんど河原くんの顔を見れずに返事をするけれど河原くんの声色はいつもと同じだった。
社員専用の売店に向かった河原くんの背中を見送り、私も屋上まで移動する。
昨日のこと、どう切り出すべきだろう。
まずは突然逃げたことを謝ってそれから……また謝って……ってなるだろう。
自分が悪いのに、考えるだけでも気が重い。私はノロノロとした足取りで屋上のドアを開けた。
ガラガラと、開けた途端気持ちのよい風が頬を撫でる。
「本当に誰もいないんだ……」
外が見渡せるようになっている屋上には簡易タイプの机と椅子が用意されているが、誰一人いなかった。
しっかりとリフレッシュ出来るように、とうちの会社には昼食を取るところや休憩室はいくつも用意されている。