強引部長の独占ジェラシー
「やっ、」
力の入らない身体で必死に抵抗していた時、その低い声は私の耳にすっ、と入ってきた。
「何をしてる?」
男の腕を掴み、そう問いただすのは今日一番顔を見たくない人だった。忘れたくて飲みに行ったのに、忘れられなかった人。
「ぶ、ちょ……」
「彼女は俺の連れだが、どこに連れて行こうとしていたんだ?」
「た、ただこの子が酔っちゃったから家まで送ってあげようと思ってただけだよ。連れがいるんなら、お、送らなくてもいいか……ここはキミに任せるよ」
男は早口でそう言うと逃げるようにこの場から去っていった。
こんな時助けてくれるのが部長だなんて、皮肉なもんだ。ドクン、ドクンと胸を打つ心臓は今日飲みに行ったって、ちっとも忘れさせてくれなかったんだと実感させる。
「川島、」
すると、部長の鋭い視線がこちらに向けられた。
「何をしていたんだ?」
いつもより低い声で問い詰めるように聞いてくる部長に身がすくんでしまう。
ぼんやりしていた思考も妙にハッキリしてきて、色々考えてしまうなら嫌だった。
「まさかあの男と夜遊びでもするつもりだったのか?」
どうしてそんなこと……。
なんでこんな時だけ問い詰めるように聞いてくるの……。告白は冗談にしたクセに、私が何をしたって部長にとってはどうでもいいクセに。