強引部長の独占ジェラシー
次の日の朝。
オフィスの空気はすこぶる悪い。
暖房が効きすぎているためか、むわんっとした空気が充満していた。
パソコンの電源をつけて椅子に腰掛ける時、ふわりと女性らしい香水の匂いをまとった鈴村さんが話しかけて来た。
「おはよう。あれどうしたの?クマすごいね」
「ちょっと寝れられなくて……」
「悩み事?」
「いえいえ、そんな大したことじゃないんです」
私は少しオーバーに手を振って見せる。
言えるわけがない。昨日、部長にあんなこと言われて眠れなかったなんて。
女子社員が聞いたら、叫びながら私を白い目でみるだろう。
「そうなの?じゃあ今日は早めに休みなね」
「ありがとうございます」
私が頭を下げると、鈴村さんは自分の持ち場に戻っていった。
昨日。
あの言葉を言われた後はドキドキと鳴り出す心臓を抑えるのが大変だった。
俺とキス出来るか?なんて聞いてじりじりと近づいてくるもんだから、慌てふためいて本気で質問に返してしまった。
『む……無理です、部長とキスなんて!私、キスは好きな人とじゃないと……』
よくよく考えてみたら、からかって聞いただけだって考えるのが普通だったのに流しもせずしっかりと返してしまったことに恥ずかしくなった。
『ふっ、そうだよな。』