強引部長の独占ジェラシー
9、気づかなかった気持ち【朝倉side】
【side:朝倉俊】
『好き、だったんです……っ』
『部長のことが、好きなんです』
身体を小さく震わせながら、泣きそうな目をしてそんなことを言う川島にもう、冗談だろうなんて言葉は口が裂けても言えなかった。
気づかなかった。
その言葉で片付けられるほど簡単なことじゃない。真剣に気持ちを伝えられた日、それを冗談だと片付けた俺は彼女をどれほど傷つけてしまったのだろう。
川島が俺のことを好きなんて思いもせず、彼女にフってくれという言葉を言わす。
随分酷い男だ。
「すまなかった……」
他の男とどこか行こうとしてたのも、こうなったのも全部俺のせい、だったのか……。
彼女の気も知らず説教なんてして、ホテルに連れ込んで、俺は一体何をやってるんだ。
「はぁ……」
自分にため息をつき、頭を抱える。川島を目の前にすると、冷静ではいられない。
そうなったのはいつからだったか。
思えば、あの時から形容しがたい気持ちはちりちりと心に溜まっていたような気もする。
『純夏ちゃんのことが好きなんだ』
あの日。
壁の向こうで河原と川島が話している話を聞いてしまった。
普段他人の恋愛なんて気にも留めなかったのに俺は川島に会った時、こんなことを口走っていた。