強引部長の独占ジェラシー



「うう、なぜまた残業……」

気付けば時計は昨日と同じ20時を指していて、私は深いため息をついた。


悲しいくらい至急の提出書類は被る。
丸山出版のデザイン案も、社内の企画書の納期もなぜこんなに被るんだろう。


これがまた部長や鈴村さんであれば手際よく片付けてしまうんだろうけど、私はそうはいかない。ひとつひとつ片付けていくのが遅く、この時間になってしまった。

ペットボトルのお茶を一口のんで、変に力の入った身体をリラックスさせる。

すると。


「川島はまた残業か」


そんな声がして振り返れば私を寝不足にした犯人が声をかけて来た。


「ぶ、部長!」

昨日あんなところを見られたというのに、部長の方は何事も無かったように堂々と話しかけてくるからちょっと悔しい。

私は部長のあの質問にあんなに動揺したのに、スマートな人は少し何かあったくらいじゃ取り乱さない。



人がいなくなったオフィスに私たちの声が響く。

昨日なんであんな質問をしたのか聞いてみたい。

私をからかってしたのかもしれないけど、もしかしたら、本当に何か意味があったのかもしれないし。

でもそんなことを直接聞いたら、なんか期待してる女みたいに見えるだろうか。


悶々と頭の中で考えていると、部長はそれを見てふっ、っと笑った。

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