強引部長の独占ジェラシー
「何か食べたいのある?」
食べ物は初めて行くところということもあり、河原くんに任せることにした。
ドリンクが運ばれて来て、食べ物の注文を終えると私たちはお疲れ様、と小さく乾杯をしてお酒を飲んだ。
言わなくちゃ、と意識するとその分居心地の悪さを感じて、ソワソワしてしまう。
早く伝えた方がいいのかな?それとも料理が来てから?……タイミングが分からない。
何度か言おうとしてタイミングを失って、お酒を手にとって紛らわせて、というのを繰り返していると河原くんは言った。
「言わせない、方が紳士なのかな?」
「え?」
「いや、何言われるか分かってる癖に知らないフリして待ってるのって、ズルいのかなって……」
河原くんは複雑に笑うと、人差し指で鼻をかいた。
「最初はさ、本当に同期って目でしか見てなかったんだよ。だけど、辛い時、純夏ちゃんの一生懸命なところを見て俺も頑張ろうって、何度も救われたんだ」
初めて会社に入社する頃から同じ気持ちで、一緒に頑張ってきた。最初の頃はお互いに力不足で悩んだり、辛いこともあったりして励ましあってやって来た。
私にも河原くんの存在は大きかったと思う。
それでも好きになることは出来なかった。
「河原くん、私ね……」