強引部長の独占ジェラシー
ちょうどやって来た電車に乗り込むと、時間帯が遅かったためか、人はぱらぱら、といるだけだった。空いている席にふたりで座り、話している時も部長はいつも通り。
会いたいなんて、送られて来たから少し期待しちゃったけど、そういうところが部長らしくてちょっと寂しかったりもする。
「本当に良かったんですか?」
部長は私の家の最寄り駅で降りると、危ないからと言って家の近くまで送ってくれた。
「何がだ?」
「だって部長の駅、2つ前だったのに……結局家まで……疲れてないですか?」
「ああ、会いたかったからな」
ドキン。
胸が音を立てる。
顔色を全く変えずに、そんなことを言うのは、なんだかズルい。
「20分くらいだな」
腕時計を見ながら呟く部長。恐らく最終電車に間に合うための残された時間だろう。部長は私の家の近くにある公園のベンチに腰を下ろした。
「すまなかったな、突然会いたいとか言って」
「いえ……」
嬉しかった、なんて伝えたら部長は顔を赤らめたりしてくれるんだろうか。
「今日は話せたか、河原と」
「はい。しっかり話して来ました」
「そうか……」
公園のベンチの横に付けられた電灯が部長の顔を照らす。部長は私を見ようとはせず、視線を下に落としたままだった。