強引部長の独占ジェラシー


「ん、食べる」


わずかに寝ぼけながら、舌足らずにそう言うと、部長はむくっと起き上がって洗面所に向かった。

「美味そうだな」

顔を洗って戻って来た部長が嬉しそうな顔をするのを見るとやっぱり幸せな気持ちになれた。それだけで十分だって思えればいいんだけれど、欲を覚えるとそうもいかない。


「「いただきます」」


手を合わせて、朝ごはんのハムエッグを摘まむ。ご飯にサラダとしじみの味噌汁。部長は和食派で、3食しっかり食べる人だ。


そういう小さいことも一緒にいて、どんどん分かって来るのも嬉しくて自ずと将来の事を想像してしまう。


でも部長は全然考えていなかもしれない……。


不安になる。

だからこそ、やっぱり確かな言葉が欲しいと思ってしまう。


「どうした?」

気づけば考え込んでいたのか、部長は優しく私に問いかけた。

「元気ないな、具合でも悪いか?」

「いえ……違うんです、ちょっとぼーっとしてただけで」


ううん、やめよう。


せっかく部長と1日一緒に過ごせる日なんだ。こんなことを考えてひとりで暗くなっていても、仕方ない。


「楽しみです、部長と出掛けられるの」

私は咄嗟に話を変えた。





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