強引部長の独占ジェラシー
思考回路までどろどろに溶かさてもう何も考えられなくなった時。
「……部長、じゃない。」
ゆっくりと離れていった唇はそう伝えた。
「え?」
意識がふわふわとした状態で聞き返せば、彼は言った。
「名前で、呼んでくれ……」
ドキン。
心臓は強く胸を打つ。
会社ではポーカーフェイスを崩さない部長が今は眉を下げて子犬みたいな目をしてこっちを見ている。
みんなが知らない部長を見たいと言ったけど、彼はところどころで見せてくれていた。
「純夏、呼んで」
「…………っ」
キスする前の色気のある声。
「なんだ、呼べないのか?」
私をからかう時のイタズラっ子みたいな表情。
そのどれもが私しか見られないものなんだと、今になって気がついた。
その瞬間、かっと顔が赤くなっていく。心地よい幸福感に包まれながら、手で顔を隠して、放った言葉はとても小さくて相手に届いているかも分からなかった。
「瞬さん……」
それでも部長は満足げな顔をして、私のおでこに軽いキスを落とした。
「そ、可愛い」
そんなことをいいながら。
「純夏、」
もう何度心臓を掻き立てられたか分からない。それなのに、部長はさらに私の心を乱すのだ。