強引部長の独占ジェラシー
そう、ですよね……。
それを言ったのが部長じゃなければ、怒りの収集がつけられないところだけれど、そんなもの全てすっとばして見惚れていることしか出来ないからやっぱり完璧だと思う。
敵わない。私が何を言おうとも。
部長はオフィスの出口に向かいながらスマートに手を振った。
「早く帰れよ」
言われなくたって帰りますとも!
部長がいなくなり、誰もいない部屋でポツリとつぶやく。
「腰抜けるかと思った……」
私はまだバクバクしている心臓を落ち着かせるようにお茶を飲んだ。
それをカバンにしまい、机に並べられていた資料をまとめる。オフィスを後にしたのはそれから3分後のことだった。
中と外の温度さがまるで違ってぶるりと身を寄せる。
今日は寄り道をせず、すぐに駅に向かった。
電車に揺られること30分で自宅の最寄駅につく。
この時間になると電車も空いてくるのが唯一の救いだ。駅に着き、改札を出ると静けさが広がる。
その静けさにほっとした。住み心地のいいところを選んだと自分でも思う。
人が多いところは正直得意じゃないから。
その時、ブーブーという着信音が上着のポケットの中で響いた。携帯を取り出してみると、ディスプレイに表示された名前は母だった。
「はい、もしもし」
「もしもし純夏?最近連絡くれないから、元気にしてる?」