強引部長の独占ジェラシー


ああもう、いっそ自販機で飲み物を買うところからやり直したい。

冷や汗を手のひらで拭っても一向に汗は引こうとしなかった。


すると、部長は考える素振りを見せてから、私に言った。


「うーん、まぁいい。少しくらいそれに付き合ってやろう」


付き合うとは……?

疑問が頭の中に浮かぶ。しかし、部長は私が深く考える前に次の言葉を言った。


「川島、俺がお前に欠点を教えてどうなる?俺にはどんなメリットがある?」


メリット……!?

まさかそんなこと聞かれると思わなくて、私は戸惑った、


部長が私に欠点を教えて得をすること……。


なんだろう。

ぐるぐると頭を巡らせて考えるけど、ちっとも思い浮かばない。正直言って部長にメリットなんか、ない。そう答えるのが最も簡単で、最も正しい答えだと思った。


「出てこないのであれば教えないぞ?」

だけど、せっかく部長が私に作ってくれたチャンスだ。ここで逃すわけにはいかない。そう思って頭をフル回転させて考えた末、思いついた答えはこれだった。


「えっと、私がその欠点克服を手伝います、とか……?」


ああ、たったこれっぽっち。
あまりにも拙い答えに自分でも呆れた。


「ふっ、」


部長はバカしたように笑うと、持っていたコーヒーを飲み干して歩き出した。

スタスタと足音を響かせて、こちらに向かってゆっくりと距離を縮める。


「ぶ、部長……!?」


< 28 / 186 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop