強引部長の独占ジェラシー
淡々と話す部長の表情は少し寂し気だ。
「気持ちを持たない恋愛に慣れてしまったみたいだな。本気で考えている相手に気持ちを返そうとするたびに、ダメだと肩を落とすことになる。彼女もそのせいで傷つけた」
本気の恋愛は出来ない……。
きっと会社の女性社員が聞いたら揃って肩を落とすだろう。
それでもいいと、遊びでいいという人はたくさんいたと思う。そういう人とは付き合うことが出来ても、本気で気持ちをぶつけてくる人とは付き合えないなんて、なんだかとても寂しい。
「じゃああの時に聞いた、俺とキスが出来るかというのは……?」
「好きじゃない相手にキスが出来るか?って意味だ」
「なるほど……」
なんとなく、部長があの時ビンタされていた理由を悟ってしまった。
私はあの時の質問に無理です、と答えたけれど、その答えは部長をどう思わせるものだったのだろうか。
「なんて、部下に話すことじゃないな」
部長は笑う。だけれども、その笑いは先ほどのような温かいものではなく切なさを含んでいた。
なんて言えば部長は元気になってくれるだろう。無意識にそんなことを考えていたけれど、だからと言って気の利いた言葉がで出て来るわけもなく、私はただ当たり障りのない言葉を選んだ。
「部長なら、いつか本気になるくらい好きだと思う相手が出来ると思います」