強引部長の独占ジェラシー
雑誌に載せるためのイラスト案の企画書だ。確かこの書類の締め切りはあと3日先だったはず……。
「5日前に言ったろ。期限が短縮になったと」
はっ、と息を飲む。
部長の言葉で5日前の出来事を思い出した。
『川島、中央雑誌に持っているイラスト案の企画書だが、印刷会社の都合で印刷が早まるらしい。20日までにお願い出来るか?』
『はい、大丈夫です』
そうだ、確かにそんな事を言われていた。
あの日は仕事がたてこんでいて、メモする暇もなくそのまま記憶から消し去られてしまったんだ。
どうしよう……。
顔の血の気がすうっと引いていくのが分かった。
今の時刻は10時。
いつものペースでは、確実に1日半はかかる仕事だった。
残業をしたとしても今は労働規則が厳しくなったため2時間が限界。
これはマズいことになった……。
「じゃあ、よろしく頼んだぞ」
「はい……」
にっこりと営業スマイルを浮かべる部長。そんな部長が去っていく姿を私は垂れ下がった眉で見つめていた。
も、もう少し情があってもいいのでは……?
なんて、こんな事を言ってる場合じゃない。慌ててパソコンのデータを呼び起こすと、私は時間を忘れるようにイラスト案の制作を行った。
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