強引部長の独占ジェラシー
ずるい。
部長って、自分では気づいてないのかもしれないけど、案外人たらしだ。狙いもせずにそんなこと言うなんて、恐ろしい……。
私が緩む頬を抑えるために、しかめっ面をしていると、部長はどうかしたのか?なんて的外れなことを聞いて来た。
「いえ、なんでも」
”あなたのせいです”
なんて、心の中で思っていると、私たちは店の前に着いていた。
中に入っていくと、店員さんが案内してくれる。店の中を歩いている段階から一際盛り上がっている声が聞こえて来て、これはもういくらか出来上がってる人がいるな、と予想はついていた。
そして案の定、席に着くと周りは皆、顔を赤くして陽気に笑っていた。
「お疲れ様です」
「お疲れ〜!みんな、部長様のお出ましだぞ」
どかっと笑い声が響き部長は顔をしかめる。
「ペース早いな」
「まぁまあ部長、そんなこと言わずに。こっち座って下さい」
顔の赤い部下に声をかけられ、一番奥にあるテーブルの上座に呼ばれた部長。
私はすぐ入り口側にある河原くんが開けておいてくれた席に座った。
「お疲れ様〜純夏ちゃん。さっさ、お酒頼んで〜」
河原くんも、もうだいぶ顔が赤かった。私は彼からメニューを受け取ると、シャンディーガフを頼んで、さっそくおしぼりで手を拭いた。