強引部長の独占ジェラシー
ああ、一番困るパターンになってしまった。
どうしよう……。
こういうのを上手く交わせれば良かったものの、それが出来ない自分を恨んだ。
ぎゅっと手を強く握りしめて、耐えていたその時。
「お前ら飲みすぎだぞ」
低い声が私の耳元を掠める。それと同時に私と河原くんの間に水が入ったグラスが下りて来た。
「ぶ、部長……!」
「顔真っ赤だぞ。飲んでおけ」
「は、はい!」
川原くんは部長の姿を見て少し酔いが覚めたのか、背筋をピシッと伸ばすとちびちび水を飲み始めた。
それを確認した部長は一度頷くとすぐに立ち上がり別のグループに向かってしまった。
「ごめんね、純夏ちゃん」
「ううん」
顔をあからさまにしゅんっとさせながら謝る河原くんは叱られた子犬のようだ。すると話題はすぐに部長の話に移り変わった。
「男前だよなあ、部長」
「広報部の女子みんな部長狙いっすよ?正直その色気分けて欲しいっす〜」
江川さんと、私たちよりひとつ下の三村くんの話を耳で聞きながら部長に視線を移す。
「部長、来てくれたんですかぁ。嬉しい」
「ここ座って飲んでって下さいよ〜」
ボディタッチに女子からのあからさまなアピール。広報部の女子は強い。
すごいなあ、と思いつつそんな姿を見ているとなんだか心の中がモヤっとした。