強引部長の独占ジェラシー
「あの、さっきはありがとうございました」
「今度は一気飲みしなくて済んだな」
思い出さないように、逸らした視線は意味を持たなかった。部長の方から思い出させるようなことを言われるとは……。
やっぱり部長はズルい人。
「部長って、なんだか本当に完璧な人ですね……」
「……何だ、突然」
心の声は気づけば口に出していた。
決して自分が助けたことをひけらかしたりしない。でも、それでいて周りの雰囲気も崩さない。なんだかそういうところが、本当に完璧な人だと改めて思った。
「こんな風に助けてくれたら、部長のことみんな好きになってしまうわけだなぁと思いまして……」
発した言葉はどこか自分の言葉じゃないみたいにふわふわとしていた。ああ、今更酔いが回ってきたのかもしれない。
そう思った時、部長は言った。
「何だ川島。お前、俺に惚れたのか?」
「……えっ!!な、なんでそうなるんですか!」
「今の流れだったら普通にそう考えるだろう」
確かにそうだと気づくと同時、一気に顔が赤くなった。
「えっと、その、あの……そういう意味ではなくてですね……」
ぽつり、ぽつりと言葉を重ねていくと、部長は口の端を緩やかに持ち上げ、笑みを作ってみせた。