強引部長の独占ジェラシー
「冗談だ。それと……俺を聖人君子みたいに言うな。そんな色んな奴を助けてたら身が持たん。見て見ぬフリだって平気でする」
「……っ。」
ドキン、ドキンと一定のリズムで音を立てる心臓。何かがせり上がってくる感覚を必死で抑えようとしている自分がいる。
私だから助けてくれた?
今、口を開けばきっと好きだと言ってしまっていただろう。
しかし。カラン、カランと店のドアが開いたことで私は我に返った。
「お話中すみません部長。ちょっといいですか?」
営業課長が部長を呼び、部長は私に「風邪引く前に戻れよ」とだけ声をかけて中に入っていった。
緊張が解けたかのようにがくり、と膝が崩れ落ちると私はその場にしゃがみ込んだ。
私、さっき何を言おうとした?
後1秒遅ければ好きだと声に乗せていた。
「やめてよ……」
つぶやいた言葉は誰かに拾われることもない。
期待すればするほど自分が惨めになる。
この人に恋する気持ちを抱かない方がいいと分かっていて、こうなってしまうのだから本当に自分は愚かだと思う。
それでも抑えられない。
ドキン、ドキンと鳴る心臓はいつもよりも強く、そして確実に速く響いていたーー。