強引部長の独占ジェラシー



随分ゆっくりしちゃったな……。
早く帰らないと。

お会計をしてもう一度寒空の下に出る。
ほぅ、っと息づけば白いもやが目の前に現れてさらに寒さを感じさせた。


冷たい風が顔に当たるのを防ぐように下を向き、駅に向かう足を早めていると。


「何よ、それっ!」


女性の大きな声が聞こえてきた。


ああ、またか。


意外とこの時計台がある待ち合わせスポットでよく見る男女の修羅場。仕事帰りは疲れてピリピリしてしまうのか、それとも女性はナーバスなりやすいのか、この時間帯はカップルのケンカや愚痴で溢れていた。

目を合わせないように、今日も普段通り通り過ぎようと思ったその時、私の足はぴたりと止まった。


え……!?
ウソでしょ?

だってまさか、その女の人に怒鳴られていたのが私の知る人物だったから。


仕事も出来て、優しく何もかも完璧だと言われる部長。何度瞬きしてみても、そこに確かに部長はいた。


あの部長が修羅場?


こんな時に見ないふり、なんて言ってられるわけもなくて、私はこれは面白い事になりそうだと思い、咄嗟に近くにある物影に隠れた。


ーーパシン。

その瞬間痛々しい音が響く。

うわ……。
思わず私も目をつぶってしまい恐る恐る目を開いた。


「最低……っ。別れて」


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