強引部長の独占ジェラシー
「はい」
部長は一通り会話をすると今度は私の方に向き直って言う。
「俺は片桐に会いに行くが、自由に見て周るといい」
「はい、そうします」
一旦部長と別れ、私は気になるブースを見て周ることにした。
アニメーションや原画、グッズなど、どれを見ても自分を奮い立たせるものばかりで、私は仕事だと言うことも忘れ、夢中になってそれらを見ていた。
すると。
「川島ちゃん」
突然、後ろから声をかけられた。
「あっ、吉澤さん……!」
声をかけて来たのは井田プロダクションの吉澤さんだった。
「来てたんだ」
「はい、部長に連れて来てもらいました」
井田プロダクションは主にグッズ製造を行っている会社で、今まで一度、一緒に仕事をしたことがあった。
当時初めて、外部の人と接した私はガチガチに緊張していたんだけれど、吉澤さんが優しく話しかけてくれたお陰でなんとか話し合いに参加することが出来た、という思い出がある。
「あれからしばらく経つけど、仕事は順調?」
「お陰様で。人が来ても緊張しないくらいにはなりました」
「あはは。懐かしいな〜あの時は入社したてだったもんね。前と雰囲気が全然違うよ」
吉澤さんの落ち着いた話し方に優し気な笑顔は今でも変わっていない。