WHAT COLOR IS LOVE
それでも、僕を殺せると思って、泣いている君。
一瞬の隙もなく、君を見つめ続ける僕。
なんだか急に全てが馬鹿馬鹿しくなって、僕は笑う。
気が狂ったように大きな声で、腹を抱えて笑う。
だって、君は僕を愛していて、僕も君を、言葉で言えば愛しているのに。
こんなにも無駄な悲しみと、無駄な恐怖と、無駄な時間の中にいて。
ゲームはもう終わらせなくてはいけない。
君はもう、泣く必要などないのだから。
僕はもう、君から目をそらしてもいいのだから。
僕は、目を閉じた。
それでも、瞼の裏には君の赤が残る。
ああ、こんなにも君を忘れられないのに。
どうして君は、僕のことを何にも知らないんだろう。
君はどうしてそんなに赤いのだろう?
「愛のないセックスを、お前は気持ちいいのか?!」
君は大きな声で叫んだ。
驚いて僕は目を開ける。
「無駄なセックスは、寿命を縮めるだけだ!!」
気がつけば君は、僕の左胸にナイフを押し当てている。
君の顔は、ますます赤くなって、僕に滴る涙も、湯気が立つほど熱い。
「アタシを抱こうとするのは、もうやめろ!!」
君を、抱く……?
そんなことは考えたことがなかった。
僕はただ、君を見つめることだけがすべてだった。
ありきたりな言い方で言えば、それだけで幸せだった。
「それともアタシを愛してる??」
そうだね。
確かに、君の知っている言葉で言えば、そうなのかもしれない。
けれど、そんな言葉で、この気持ちを君に伝えることはできない。
「なんか言いなさいよ!!」
何を君に伝えればいいのだろう?
今、少しずつ込められる君の左手の力を止めるために。
僕は何を伝えればいいのだろう?
例えば愛してると言ったら、このナイフを止められる?
いいや。
きっと、無理だ。
君が僕を殺そうとする理由は、そんなところにないだろう?
僕が君を愛していることなんか、もう、とっくの昔に知ってるんだろう?
そんなことじゃあなくて、もっと、もっと確かなものが見たいんだろう?
もっと本当のものが、欲しいんだろう?
その為の言葉が、どうしても僕には見つけられないんだよ。
どうしても君に殺されることしかできないよ。
< 12 / 52 >

この作品をシェア

pagetop