Fine Weather
出会い
«優奈side»
私達はあの日出会った…​…​
ある8月の夜に。



いつも通り仕事を終え、
駅ビル内にある職場から
少し離れた所にある駐車場へと向かっていた。

ふと正面からやって来た2人の少年に目がいった。
そのうちの1人、チャラそうなイケメンと目が合い、そのまま近寄ってきた。

『こんばんわ』
想像してたより低めの声の持ち主である
イケメンくんが素敵な笑顔とともに言葉を発した。

「…​…​(ぺこり)」
イケメンに圧倒され、言葉に詰まった私はとりあえずぺこりと軽くお辞儀をした。

『俺たちイベントの帰りなんだけど、お姉さんは?』
「…​…​私は、仕事帰り」
そう言いもう1人の大人しめな少年の方をチラッと見ると目が合い、
近くのベンチに腰掛けようとしたタイミングで腰掛けるのをやめ、こちらへやって来た。

「あれ、それってギター…​…​」
大人しめな少年の背中にはギター、
片手にはアコギケースまであった。

チャラそうなイケメンの背中には
よく見るとドラムスティックのケースが。

『そう、ギター…​…​』
『バンドやってて、そこそこ有名だよ俺ら』
大人しめな少年の言葉を遮り
イケメンが少し興奮気味にそう言った。

『こいつ、一応一般人じゃないよ(笑)』
大人しめな少年の肩を抱きながら、イケメンはそう言った。

「そっかぁ
私も高校時代ベースやってたな」
『っ!!!?』
その言葉に何故か2人は反応した。

『…​…​ベース?』
『マジで…​…​?』
「…​…​?」
2人は目をぱちくりさせながら驚いた様に見合わせていた。

『いや、実はさ新しいベーシスト募集してて』
イケメンが言った。
『まだ公にしてないけど、ベースがあと2回ライブ終えたら脱退するんだ』
大人しめな少年は少し寂しそうに言った。


「そう、なんだ…​…​」
『やってくれたりしない?』
「ブランクあるし、ライブ慣れしてないから直ぐには…​…​君たちのライブもまだ見てないし」
『じゃぁ、今度来て。1週間後I町のライブハウスであるから』
大人しめな少年は言った。
『因みに俺らのレコ発ライブな』とイケメンは付け足した。

それからも何だかんだバンドの話しやらで盛り上がり、2時間近くは話していた。
イケメンと即LINEを交換し、大人しめな少年はシンガーソングライターをやっていて、一応事務所にも所属しているらしく、一般人では無いから連絡先の交換を渋っていたけど、結局教えられたので、登録した。

ドラムの子が
芹沢海斗(せりざわ かいと)
シンガーソングライターの子が
桜田葵生(さくらだ あき)
一応SAKUで通っているらしい。

『そういやさ、彼氏いないの?』
海斗がニヤニヤしながら聞いてきたので
即答で「いない」と言った。
『じゃぁ、ラブホ行こ?』
「え?」
『…​…​』
初対面の人とラブホって…​…​
『サクも行きたいっしょ?』
『は?』
『彼女に振られちゃって寂しいから慰めてー』
葵生の発言を無視し、勝手に話を進める海斗。

『駅南にあるじゃん?』
「ホテルDね」
『行きたい!優奈ちゃんと』
呆れて何も言えず、葵生にアイコンタクトで助けを求めるも…​…​
『行ってくれば?こいつ上手いよ』
と笑いながら言われた。

『じゃ、ここでちゅうするのと
ラブホ行くのだったら?』
いや、どちらも嫌だけど!って
心の中でツッコミを入れていたら…​…​

「…​…​っちょっ!?」
いつの間にか壁ドンされ、
目の前に整い過ぎる海斗の顔があった。

『遮ってあげるから
するならさっさとしなよ(笑)』
と葵生は完全に楽しんでいた。

「いや、ちょっ葵生…​…​!」
『海斗じゃなくて俺とラブホ行ってくれるなら助けてあげる』
完全に面白がってる…​…​しかも年下に…​…​

「いや、行かないけど…​…​助けて」
『…​…​』
葵生は何かを考えながら、一瞬にして海斗から救出してくれた。けど…​…​
安心したのも束の間

ちゅっ…​…​
…​…​ぱくっ
「っ…​…​!?」
耳を一瞬にして食われた…​…​

「ちょっ…​…​」
『ん?』
何か?と言わんばかりの表情をした。

「っ!?ちょっ…​…​」
どさくさに紛れて胸まで揉み始め、海斗が止めに入った。

『サク!』
「…​…​ってかアンタら酔っ払いか」
至近距離になって分かった。
未成年のクセに飲酒していた…​…​

『まぁ(笑)』
「まぁ…​…​って…​…​帰りは?電車?」
時間的にアウトな気がして恐る恐る聞いてみた。

『げ…​…​電車もしかして無くね?』
葵生が慌てて携帯を取り出す。
『俺は始発で東京帰るよ~』
海斗は呑気にそう言った。
『俺明日朝イチでバイト…​…​』
若干焦りだした葵生。

見兼ねた私は「家近いのどっち?」と聞いてしまった。

『芹さんの実家』
「車だから海斗の実家まで乗せようか?」
流石に可哀想に思い提案した。

『え…​…​でも』
「バイトあんでしょ?今回だけ送る」
半ば強引に送ることにし、2人を連れて駐車場へと向かった。


30分程で実家へと着き嵐は去っていった…​…​。




とんでもない年下にナンパされたけど
久し振りに楽しい夜だった事には変わりない。

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