【完】1輪の花たちは
「失礼します」


男性の後に続いて私も入る。


「し、失礼します……」


中はとても広くて、床は大理石に赤の絨毯、壁は黒く塗られていて、目の前には立派な木で作られた机。

机の所に座っているのは、親分らしき人。

私はその人を見て足が動かなくなった。


「やぁ、いらっしゃい。よく来たね」


その人はそう言って私の姿をとらえた。

その人の目は鋭くて、目があったら最後、生きて帰ってはこられない。そんな感じがした。


「連れて来ました。めぐみという名前だそうです」

「あぁ。知っているさ。お前は下がってろ」

「はっ。ただいま」


そういって、さっきまで笑顔を浮かべていた男性は部屋の隅へ移動した。

親分は、私の姿をとらえて離さない。


「……」


なにか話そうとしても声が出ない。


「君は、あれだね。緊張してるね」


頬杖をついて、私に話しかける。


「は……はぁ…」

「君は今日からマフィアの一員だ。わかるかな?16歳にもなれば、理解はできるだろ?」

「………………まぁ…」

「マフィアとは、なにかわかるかな?簡単に言えば、暴力的犯罪組織だ。つまり、裏の社会。闇社会とも言うかな?」

「犯罪…組織……」

「そう。犯罪組織。君は、今日からその一員だ」

「ま、待ってください!そんなの聞いてません…」

「ん?なにかな??」


親分は、私の反論をその1言でかき消した。


「な、なんでもありません…」


これ以上反論したら殺されかねない。

そのぐらい、親分の目は鋭かった。


「うん。実は君の父は、ここのファミリーに殺された」

「………………………………え?」

「落ち着いて聞いてくれるかい?君は……………人質だ」
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