【完】1輪の花たちは

「ちょこまか動く女だなぁ!」


私は、気を緩めていた。

大事な時に考え事はするんじゃない。


「おりゃあああああああああ!!!!!!」


男は思い切り拳を振り下ろした。


「っ………!」


私は殴られるのを覚悟して目を瞑った。



































































「よいしょー!!!!!!!!」


突然、そんな声が聞こえた。

目を開けたら、目の前には黄色のワイシャツを着て、バットを片手に立っている男子がいる。


「ユリ!」

「スノー、大丈夫だったー?」


ユリは、私を見ては近づいて頭を撫でてくれる。


「うん。平気だよ?」

「良かったー!」


よく見ると、さっきまで私を殴ろうとしていた男は床で寝ている。

きっとユリがやってくれたのだろう。


「ていうか、遅くない?」

「うん。ごめんね?ボスが全然行っていいって言ってくれなかったからさ!助けられなかったんだよぉ」


ユリは、可愛くそう言った。

うん。天使だ。この笑顔。この首の傾げ方。


まさに天使だ。


「あっ!危ないっ!」


ユリは私を抱き寄せてバットを振り上げた。


「うおっ!?」


私はそのままユリの腕の中へ飛び込む。

どうやら、私の後ろに敵がいたようだ。


「もう大丈夫だよ!」


そう言って私を開放してくれた。


「あ、ありがとう……」

「うんっ!あっ!アジサの補佐にまわれって言われてたんだ!ごめんね!スノー!」


そう言って、私を人目につかない場所に移動させて、アジサの所に行ってしまった。

動くなという事だろうか。


「私……足手まといだな………」


そう思ってしまった。
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