【完】1輪の花たちは
私の言葉を聞くと、安心したのか微笑んでこう続けた。
「俺のお父さんは親分なんだ。血が繋がってる本当の親子」
そう言ったボスは、どこかとても悲しそうな顔をした。
「意外だったか?」
「うん…でも、雰囲気とか似てたから…」
「そうか…似てる……か」
「うん……?」
「昔、父さんは俺の顔を見てこう言ったんだ。母さんに似てるなって。母さんは殺されたからもういない。けど、その母さんに似てるって言われてどう思う?」
「嬉しいんじゃないかな…?」
「普通はそうだよな」
どこか遠いところを見て話す。
「でも、父さんは母さんを殺した。嫌いだからって。そんな嫌いな奴に似るなんて、俺はお前に相当な罪を犯せちゃったみたいだなって言ったんだぜ?驚きだろう?」
微笑みながら言うボスは、目の端に涙を溜めていた。
「俺は母さんが好きだった。優しくて、俺を1番に考えてくれて、俺の味方は母さんだけだったのに…………なのに…あいつは…母さんを殺した……」
何も言葉が出てこない…。
「だけど…俺はあいつに似た…。ファミリーのボスになって、ファミリーをまとめる時、どうしても嫌いなあいつに似てしまう………取り引きの時とか冷酷に……残酷になってしまう……………」
親分と話す時のボスの顔は殺意にあふれている。
誰かがそう言った。
その理由はきっとここにあるんだ…
「ダリアっていう名前は母さんがつけたんだ。俺の本名はあいつがつけた。でも、母さんは似合わないからって俺にあだ名をつけてくれたんだ……。もし、私がいなくなっても私の事を忘れないように、私はずっとダリアの味方だからって………」
そこまでいうとボスは、俯いた。
「母さんは花が好きだった…」
それだけ言うと、ボスはもう話すことは無かった_________