To a loved one 〜愛しき者へ〜

〇〇七瀬

「━━美波様が討たれた…。」
松平七瀬は、呟くように言った...。

━━三河地区岡崎女学院天守。
織田佑美が今川美波を討った事は、全国の女子高生が知っている。

今川美波の後継者は...。
━━美波の妹で駿府女子高等学校二年、今川ちはる(いまがわ・ちはる)になるであろう...。
ちはるは、ほんのりブラウンのロングストレートが似合う、スッキリとした感じの美少女だ。
姉の美波にはやや劣るが、文武共に優れている。
文武の文に関しては、むしろ美波よりも上である。
━━しかし今の戦乱の状況だと、今川の勢いは落ちるだろうと、七瀬は思ってたいた。

「━━七瀬様。」
と、一人の家臣が声をかけてきた。

「...。」
七瀬は声のした方を見て、
「あ、花奈。」
と、言った。

七瀬に声をかけたのは、岡崎女学院二年生の本多花奈(ほんだ・かな)である。
花奈は、茶髪のショートが似合う美少女だ。
そして、よく他の女生徒の寝顔を携帯で撮るので、《寝顔ハンター》の異名を持つ...。
七瀬と同じ二年生だが、岡崎の家臣ナンバー1なので、三年生も彼女には逆らわない。
岡崎で彼女に意見を言えるのは、七瀬だけである。

「どうしたの?」
と、七瀬が訊く。

「美波様が討たれたので、今川の後継者は、妹のちはる様になると思われます。」
と、花奈は言った。

「そうね。」
七瀬は頷いた。

「正直、ちはる様では、美波様程の力はございません...。」
と、花奈は言った。

「まぁ、確かに...。」
と、七瀬は同意した。

「━━七瀬様...。」
改まったように花奈は言った。

「な、何...?」
七瀬も構える。

「━━今川から独立しましょう!!」
と、花奈が言った。

「!?」
七瀬は目を丸くした。

━━花奈には、野望というか願いがあった。
花奈は、七瀬の可愛さをすごく気に入っている。
そんなお気に入りでもあり、主君でもある七瀬が、今川の下にいる事が納得出来なかったのだ。
花奈は、これをチャンスと捉えているようだ。

「で、でも...。」
七瀬は、少しためらった。

「まずは東の今川に備えて、西の織田佑美様と同盟を組みましょう。
織田佑美様は、七瀬様の幼馴染とお聞きしました。
きっと、お力になって頂ける事でしょう。」
と、花奈は言った。

「......。」
七瀬は、少し考えてから、
「━━分かった、独立しよう。」
と、同意した。

「七瀬様は、好きなお色はございますか?」
と、花奈が聞いた。

「━━緑かなぁ...。」
と、七瀬が言った時、

《ぷるるるる》
七瀬の携帯が鳴った。

「ちょっと、ごめん。」
と言って、七瀬が電話に出た。

「もしもし...え!?...うん、分かった...。」
と言って、七瀬は電話を切った。

「どうかなさいましたか?」
と、花奈が訊く。

「━━両親の離婚が決まったみたい。
だから、私の苗字が母親の旧姓になるって...。」
と、七瀬は答えた。

「━━そ、そうですか...。」
と、花奈は少し気まずそうだった...。

「あ、でも、もう殆ど決まってたし...。
だから、そんな気まずそうにしなくてもいいよ。」
と、七瀬は笑った。

「あ、はい...。」
と、花奈は頷いてから、
「━━そ、それで、新しい...ご苗字は?」
と、申し訳なさそうに訊いた。

「うん?苗字?徳川(とくがわ)だよ。」
と、七瀬は答えた。

「と...徳川...七瀬...様。」
と、花奈は口に出してから、
「━━素敵な響きです。」
と言った。

「有難う。」
と、七瀬は微笑した。

「今日から私達は、徳川軍として独立しましょう!!」
と、花奈が言った。

「うん。」
笑顔で七瀬が頷く。

「そして徳川軍の色は、七瀬様のお好きな緑にしましょう。」
と、花奈が言った。

チームカラー緑の徳川七瀬の誕生である...。
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