To a loved one 〜愛しき者へ〜
薩摩おごじょ
岐阜県美濃地区関ヶ原。
━━西軍は、ほぼ壊滅状態だった。
島津怜奈の軍も周囲を東軍に囲まれ、退路を絶たれてしまった。
「ここは、強行突破するしかありません!!」
怜奈は、家臣達に言った。
━━そして怜奈達は乗り物を捨てて、敵陣を強行突破した。
文武の武が桁違いに長けている怜奈は、その強さから《鬼島津(おにしまづ)》と恐れられている。
本来、そこら辺の女子高生が勝てる相手ではない。
この行為は、後に《島津の陣中突破(しまづのじんちゅうとっぱ)》と呼ばれた。
怜奈達は、徳川七瀬の陣まで迫ってから、急に進路を変えて南下した。
それに対して、七瀬の軍が追撃をして来た。
━━突然!!
怜奈達の家臣の一部が、その場に留まった!!
「!?」
玲奈が気付いて、
「どうしたんです?」
と訊いた。
「怜奈様...。」
その家臣は、怜奈を見て、
「怜奈様は、お逃げ下さい。」
と言った。
「怜奈様...今までありがとうございました...。」
別の家臣が頭を下げて、
「怜奈様のおかげで、飼い犬の出産に立ち会えました。」
と言った。
「あなたは...。」
怜奈は、すぐに気付いた。
━━あの時の女生徒だ。
今度は、別の女生徒が怜奈を見て、
「私、存在が薄くて...中学生の時に、みんなから“透明人間”って呼ばれて、馬鹿にされてました...。
友達もいなくて、高校に入っても、ずっと一人ぼっちでした...。
携帯なんて持ってても、誰からも連絡なんて来ない...。
そう思ってたのに...今年の私の十七歳の誕生日に...初めてメールが来たんです。」
と言って、メールの画面を怜奈に見せた。
『京子様
17歳のお誕生日おめでとうございます!!
(*'∇')/゚・:*【祝】*:・゚\('∇'*)
日付変わってすぐに送ったので、
一番におめでとう言えましたかね?
(*^^*ゞ
私は一応は大名ですが、京子さん達に
いっぱい迷惑をかけてますね...。
ごめんなさい。
m(。>__<。)m
京子さん達がいてくれるから、
私は安心してます。
ありがとうございます!!
(*´︶`*)♡Thanks!
至らぬ所ばかりの私ですが、
これからもよろしくお願いします。
(人´ω`*).☆.。.:*・゜
れな 』
「怜奈様は、私の存在に気付いてくれました...。
嬉しかったです...。」
その京子という女生徒は、涙を浮かべていた。
「それなら、なおさら...。」
怜奈が促す。
「行けません。」
女生徒達は拒否した。
「大名である、私からの命令です!!」
と、怜奈は強く言った。
普段は、あまり大名である事をひけらかさない怜奈であるが、こうでも言わないと動きそうにない。
「聞けません!!」
「お断り致します!!」
と、女生徒達は拒否した。
「受けたご恩は、きっちりお返しする...。」
京子は怜奈を見て、
「それが、“薩摩おごじょ”のプライドです!!」
と言った。
━━薩摩おごじょとは、鹿児島県の女性を指す言葉で、《気立てが良い・優しい・筋の通ったしっかり者》などのイメージがある。
━━すると別の女生徒が、
「怜奈様、参りましょう。」
と、怜奈の手を引いた。
「ちょ、ちょっと...。」
と言いながら、怜奈は連れて行かれた。
女生徒達は、数十名の女生徒が立ち止まって死ぬまで相手を食い止め、その女生徒達が全滅したら、また別の女生徒達数十名が、命懸けで足止めをするという戦法を繰り広げた。
━━途中で、七瀬より追撃中止の命令が下され、怜奈は逃げ切る事が出来た。
三百人程いた女生徒も、残ったのは怜奈を含めて八十名程だった。
島津怜奈が、今まで家臣の女生徒達にかけてきた優しさや恩を、彼女達は命懸けで返した。
誰かに命令された訳でもなく、自発的に怜奈を逃がそうと、誰からともなく始めたこの戦法は、後に《捨て奸(すてがまり)》と呼ばれた。
「うわぁぁぁぁぁっ!!」
逃げ切った怜奈は、大声で叫んで泣いた。
「私が...あの時...くだらないプライドで出陣しなかったから...。
あの時、すぐに出陣してれば...こんな事には...こんな事には...。
皆さん...申し訳ございません...でした...。
私のせいで...。」
怜奈は自分を責めた。
「怜奈様のせいでは、ございません!!」
一人の女生徒が怜奈を見て、
「むしろ、あのような無礼な態度を取られたのに、ノコノコ出陣していたら、私達は怜奈様を軽蔑していたかも知れません...。
怜奈様のご判断は、間違っておりません!!
彼女達は、怜奈様に恩返しがしたかったのです。
彼女達だけでは、ございません...。
私達も...怜奈様を命懸けでお守り致します!!」
と言った。
筋の通った薩摩おごじょ達は、維持とプライドで怜奈を守りきった...。
━━西軍は、ほぼ壊滅状態だった。
島津怜奈の軍も周囲を東軍に囲まれ、退路を絶たれてしまった。
「ここは、強行突破するしかありません!!」
怜奈は、家臣達に言った。
━━そして怜奈達は乗り物を捨てて、敵陣を強行突破した。
文武の武が桁違いに長けている怜奈は、その強さから《鬼島津(おにしまづ)》と恐れられている。
本来、そこら辺の女子高生が勝てる相手ではない。
この行為は、後に《島津の陣中突破(しまづのじんちゅうとっぱ)》と呼ばれた。
怜奈達は、徳川七瀬の陣まで迫ってから、急に進路を変えて南下した。
それに対して、七瀬の軍が追撃をして来た。
━━突然!!
怜奈達の家臣の一部が、その場に留まった!!
「!?」
玲奈が気付いて、
「どうしたんです?」
と訊いた。
「怜奈様...。」
その家臣は、怜奈を見て、
「怜奈様は、お逃げ下さい。」
と言った。
「怜奈様...今までありがとうございました...。」
別の家臣が頭を下げて、
「怜奈様のおかげで、飼い犬の出産に立ち会えました。」
と言った。
「あなたは...。」
怜奈は、すぐに気付いた。
━━あの時の女生徒だ。
今度は、別の女生徒が怜奈を見て、
「私、存在が薄くて...中学生の時に、みんなから“透明人間”って呼ばれて、馬鹿にされてました...。
友達もいなくて、高校に入っても、ずっと一人ぼっちでした...。
携帯なんて持ってても、誰からも連絡なんて来ない...。
そう思ってたのに...今年の私の十七歳の誕生日に...初めてメールが来たんです。」
と言って、メールの画面を怜奈に見せた。
『京子様
17歳のお誕生日おめでとうございます!!
(*'∇')/゚・:*【祝】*:・゚\('∇'*)
日付変わってすぐに送ったので、
一番におめでとう言えましたかね?
(*^^*ゞ
私は一応は大名ですが、京子さん達に
いっぱい迷惑をかけてますね...。
ごめんなさい。
m(。>__<。)m
京子さん達がいてくれるから、
私は安心してます。
ありがとうございます!!
(*´︶`*)♡Thanks!
至らぬ所ばかりの私ですが、
これからもよろしくお願いします。
(人´ω`*).☆.。.:*・゜
れな 』
「怜奈様は、私の存在に気付いてくれました...。
嬉しかったです...。」
その京子という女生徒は、涙を浮かべていた。
「それなら、なおさら...。」
怜奈が促す。
「行けません。」
女生徒達は拒否した。
「大名である、私からの命令です!!」
と、怜奈は強く言った。
普段は、あまり大名である事をひけらかさない怜奈であるが、こうでも言わないと動きそうにない。
「聞けません!!」
「お断り致します!!」
と、女生徒達は拒否した。
「受けたご恩は、きっちりお返しする...。」
京子は怜奈を見て、
「それが、“薩摩おごじょ”のプライドです!!」
と言った。
━━薩摩おごじょとは、鹿児島県の女性を指す言葉で、《気立てが良い・優しい・筋の通ったしっかり者》などのイメージがある。
━━すると別の女生徒が、
「怜奈様、参りましょう。」
と、怜奈の手を引いた。
「ちょ、ちょっと...。」
と言いながら、怜奈は連れて行かれた。
女生徒達は、数十名の女生徒が立ち止まって死ぬまで相手を食い止め、その女生徒達が全滅したら、また別の女生徒達数十名が、命懸けで足止めをするという戦法を繰り広げた。
━━途中で、七瀬より追撃中止の命令が下され、怜奈は逃げ切る事が出来た。
三百人程いた女生徒も、残ったのは怜奈を含めて八十名程だった。
島津怜奈が、今まで家臣の女生徒達にかけてきた優しさや恩を、彼女達は命懸けで返した。
誰かに命令された訳でもなく、自発的に怜奈を逃がそうと、誰からともなく始めたこの戦法は、後に《捨て奸(すてがまり)》と呼ばれた。
「うわぁぁぁぁぁっ!!」
逃げ切った怜奈は、大声で叫んで泣いた。
「私が...あの時...くだらないプライドで出陣しなかったから...。
あの時、すぐに出陣してれば...こんな事には...こんな事には...。
皆さん...申し訳ございません...でした...。
私のせいで...。」
怜奈は自分を責めた。
「怜奈様のせいでは、ございません!!」
一人の女生徒が怜奈を見て、
「むしろ、あのような無礼な態度を取られたのに、ノコノコ出陣していたら、私達は怜奈様を軽蔑していたかも知れません...。
怜奈様のご判断は、間違っておりません!!
彼女達は、怜奈様に恩返しがしたかったのです。
彼女達だけでは、ございません...。
私達も...怜奈様を命懸けでお守り致します!!」
と言った。
筋の通った薩摩おごじょ達は、維持とプライドで怜奈を守りきった...。