To a loved one 〜愛しき者へ〜

冬の陣から夏の陣へ

━━希望元年の冬。

徳川珠美が、総勢二十万人の女生徒を動員して、大坂女学園を攻めて来た。
冬に攻撃をして来たので、《大坂冬の陣(おおさかふゆのじん)》と呼ばれた。

最初、真田未央奈は、他の女生徒達から信用されていなかった。

━━姉の真田美彩が徳川方にいたからである。
未央奈が姉と結託して、裏切るのではないかと思われていた。
この真田丸と呼ばれた校舎も、寝返りの準備だと疑われていた。

しかし未央奈は、豊臣蓮加を守る為に全力を尽くした。
真田丸から一斉砲撃を食らわせて、徳川軍を寄せ付けなかった。

豊臣、徳川両軍共にかなりの犠牲者が出たので、豊臣と徳川は和睦した。
その時に色々と条件を出され、大坂女学園の周りの堀は埋められ、更に真田丸も取り壊された...。


━━希望2年4月。

それぞれの学年が一つ上がった。

未央奈は、正式に大坂女学園に入学した。
誕生日がすぐに来たので、普通自動二輪車の免許を取った。

未央奈は蓮加に、大坂女学園内にある車庫に呼ばれた。

「蓮加様、何でしょうか?」
未央奈が訊いた。

「未央奈さんに中古で申し訳ないけど、誕生日プレゼント。」
蓮加は言って、未央奈にバイクを見せた。

━━赤く塗装されたカワサキNinja 400Rだった...。

「お姉ちゃんが乗ってたバイクだよ。
未央奈さん、赤が好きだから赤く再塗装したんだ。」
蓮加は未央奈を見て、
「未央奈さんに乗って欲しいの。」
と言った。

「そんな大切なバイクを...。」
未央奈は驚いた。

「大切なバイクだからこそ、未央奈さんに乗って欲しい。」
蓮加は言った。

「でも...。」
と、未央奈は言葉を濁した。

「どうしたの?」
蓮加が訊いた?

「私は一年生だから、原付バイクしか乗れません。」
と、未央奈は答えた。

「そんなの関係ないよ。
女子高生同士で勝手に決めたルールでしょ?」
蓮加は微笑して、
「免許があるなら、乗っちゃえばいいんだよ。
違反じゃないんだし。」
と言った。

「ありがとうございます。
蓮加様、このバイクに好きなマークを入れてもよろしいでしょうか?」
と、未央奈は訊いた。

「勿論、だって未央奈さんのバイクだもん。」
蓮加は微笑した。

━━未央奈は、ある決心をした...。


冬の陣の後、蓮加達は、戦で壊れた学校の門や壁を修復していた。
冬の陣の時に集まった女生徒達は、五万人くらいまで減ってしまったが、戦の後も学園内に残っていた。
それらの事について葵会が、

「戦の準備をしている。」
と言い出した。

そしてまた、徳川珠美をけしかけたのだ。

━━珠美は、再び大坂女学園を攻める決心をした。
《大坂夏の陣(おおさかなつのじん)》の始まりである。


5月5日の夜、大坂女学園付近の神社で未央奈は、姉の真田美彩に呼び出されていた。

「珠美様が、未央奈に信濃地区を譲るから、徳川方に来て欲しいとおっしゃってるわ。」
美彩が言った。

未央奈の武勇を知った珠美が、徳川方に寝返るように、美彩に説得を頼んだのだ。

「私は蓮加様を守ります。
信濃地区どころか、日本の半分を頂いても気持ちは変わりません。」
と、未央奈は断った。

「そう言う気がしてたよ...。」
と、美彩は苦笑した。

そして、二人は握手をした...。


5月6日、徳川珠美達の軍が再び、大坂女学園を攻め始めた。
総勢十六万五千人であった。

━━今回は、徳川七瀬も軍を率いて大坂女学園へと向かった...。

徳川幕府の軍は、幾つかに分かれていた。
その内、伊達蘭世達の軍は、奈良県大和(やまと)地区方面から大坂女学園を目指した。
その数、三万五千人。

━━豊臣軍は、大坂女学園の堀を埋められて、更に真田丸も取り壊されてしまった為、学園から出て戦うしかなかった...。

蘭世達の軍を迎え撃つのは、後藤伊織の軍二千八百人が先に攻撃して、後から未央奈の軍と、毛利みなみの軍が攻撃する予定だ。

しかし、タイミング悪く濃い霧が出てしまい、未央奈達の軍の到着が遅れてしまった。

しばらく待っていた伊織であったが、意を決して、大阪府河内地区道明寺(どうみょうじ)にある小松山(こまつやま)に陣を構えた。
それを蘭世達の軍が、包囲して攻めて来た。
二千八百人対三万五千人。

━━伊織達は、かなりの数の蘭世達の軍の女生徒を討ち取った。

しかし、数が違い過ぎる...。

いくら武が長けている伊織でも、どうにも出来ず最後は、蘭世達の軍に討たれてしまった。

後藤伊織、高校二年生。
武力に長けた美少女は、壮絶な最期を遂げた…。
< 42 / 46 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop