To a loved one 〜愛しき者へ〜

日本一の女子高生

幕府軍の女生徒達は、徳川珠美を見た。

「何をしている!!」
珠美は、幕府軍の女生徒達を見て、
「私は、将軍の徳川珠美である!!」
と言った。

「これは将軍である、私からの命令だ!!
従えない者は、厳重に罰する!!」
と、泣きながら叫んだ。

ずっと七瀬に対して、コンプレックスを持っていた珠美は、完全に取り乱していた。

「う、うわぁー」
と、一人の女生徒が真田未央奈に突撃した!!

その女生徒も、自分を守るのに必死だったのだ。
それを皮切りに、他の女生徒達も一斉に、未央奈に突撃した。

《群集心理》

皆んな、自分を守るのに必死だった。

━━未央奈は、向かって来る女生徒達を次々になぎ倒していく!!

さすがは真田純奈・美彩の妹である。

「み、未央奈!!」
徳川七瀬は未央奈を助けようとしたが、女生徒達が一斉に未央奈に向かっているので、なかなか辿り着けない。

未央奈は強かった。
かなりの数の女生徒を倒した。
四、五十人は倒しただろうか...。
さすがの未央奈も疲れてきて、一瞬、ふらついた。
その時、一人の女生徒が未央奈を殴り倒した。

「うっ!!」
未央奈は声をあげて、その場にうずくまった。

他の女生徒達も未央奈に襲いかかり、袋叩き状態だ。


━━長野県信濃地区小県上田女子高天守。

真田美彩は、お茶を飲んでいたのだが、突然、
《パリーンッ》
と、湯飲み茶碗が割れた!!

「み、未央奈!?」
美彩は、嫌な予感がした...。


「やめろー!!」
七瀬が大声で叫んだ!!

一瞬で、場が静まり返った。
女生徒達は、未央奈から離れた。
未央奈は、ぐったりと横たわっていた。

「み、未央奈!!」
七瀬は、未央奈のもとへ駆け寄ると、
「大丈夫?」
と、未央奈を抱き抱えた。

「お、お姉ちゃん...。」
珠美が、七瀬を見た。

「未央奈は、あんたの悪口なんて言ってない!!」
七瀬は珠美を睨んだ。

「未央奈自身の事を...“馬鹿な妹”って言ったの!!」
七瀬は言った。

「!?」
珠美は、驚いていた。

「未央奈は、皆んなを救おうとしてくれていたの!!」
七瀬は、泣きながら叫んだ。

「それなのに、あんたは...。」
七瀬は言った。

最後は言葉にならない。

「わ、私...とんでもない事を...。」
珠美は、その場にへたりこんだ。

「な、七瀬...様...。」
未央奈は呟くように言った。

「み、未央奈...大丈夫?」
七瀬は、抱き抱えたまま訊いた。

未央奈は、ゆっくりと頷いて、
「た、珠美様を...怒らないで...下さい...。」
と、か細い声で言った。

「珠美様は...勘違いされた…だけなんです…から...。」
未央奈は、七瀬を見つめた。

「分かったから...もう...何も言わなくていいよ。」
と、七瀬は頷いた。

「はい...。」
そう言って、未央奈は静かに目を閉じた。

「み、未央奈...?
未央奈ー!!」

七瀬は泣き叫んだ!!

「真田未央奈...。
あなたは...日本一(ひのもといち)の...女子高生...だよ。」
と、七瀬は言った。

真田未央奈、高校一年生。
義を貫き通し、全ての者を愛し、許そうとした日本一の女子高生。
真っ直ぐな美少女の、美しく儚い人生であった...。


━━その頃、毛利みなみや明石美月の軍も、徳川幕府軍によって壊滅させられた。

みなみは大坂女学園に戻り、豊臣蓮加を連れて逃げたが、途中で逃げ切る事が出来ないと判断して、蓮加と二人で自害した。

毛利みなみ、高校二年生。
最後まで蓮加を守りきった、美少女の短い一生であった...。

豊臣蓮加、中学三年生。
姉の遺志を継ぎ、平和を願った美少女は、美しく散った...。

━━長宗我部祐希は、葵会の女生徒に捕まって処刑された。
長宗我部祐希、高校三年生。
長宗我部家の再興を夢見た美少女は、その人生を終えた…。

━━明石美月だけが消息を絶ってしまい、生存が確認出来なかった...。

━━大坂女学園は、突撃した幕府軍の女生徒達に、火をつけられて大炎上した。


━━京都府山城地区京都。
「史緒里様、大坂女学園が炎上したそうです。」
と、直江かりんが言った。

史緒里達は、京都の警備をしていた。

「未央奈さん...無事でいてね...。」
上杉史緒里は、大坂女学園の方を見た。

「未央奈さん...。」
かりんは、呟くように言った。

二人共、徳川方なのだが、一緒に過ごした未央奈は気になった。
二人は、未央奈の無事を祈った。

しかし、史緒里達の願いは叶わなかった…。


━━蓮加が自害して豊臣家が滅亡したことにより、この戦乱の世は、終わりを告げた...。
< 45 / 46 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop